母が私に隠さなかった事

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母はおそらく、私には決して言えない心の闇となる出来事をたくさん隠し持ってると思います。しかし、そんな母でも1つだけいつも率直に話すことがありました。私がまだ幼稚園の頃、既にその話だけは隠さなかったのではと薄い記憶からの印象があります。 

それは、母は自殺未遂をした、と言うことです。 

母の腕には手の甲から二の腕にまでわたり、火傷後にみられるケロイドがあります。その傷は何かと問うた時に、「死のうとした」とハッキリ答えました。「嘘だ」と言うと、母は祖母に聞いてみれば良いと言いました。その場に祖母がいたのか、または別の時だったかは定かではありませんが、母がいる前で祖母にそのことを聞いたのを覚えています。祖母がなんと言ったかは覚えていませんが、否定せずに、明らかにうろたえて私の問いの答えを認めた返答だったのです。 

母からすると、そう言った私を介して祖母に直球で質問をされ、それに答えないといけないと言うのも、今思えば母ができた祖母への小さな反抗だったのかと思います。 

リストカット自体はハッキリと確認したことはありませんが、その火傷以外にも自殺を試みたことがあるセリフを何度も聞きました。何度かと言うのは、通常2、3度の体感ではないでしょうか。母はそれ以降も、何かにつけ希死念慮の強さや、過去の自殺未遂をほのめかしたり、死ぬより生きていく方が難しい、とか、死んだ人間よりも生きている人間の方が恐ろしい、と言ったことを言います。 

まるで戦時中の人の死際を何度も見たような、戦争体験の人が語る時につかうような表現と変わらないことを言うのです。 

きっと彼女にとっては、過ぎてきた過去は戦争と同じぐらいだったのでしょう。 

だから母は私が子供の頃は、信じられないほどに異常な人であったし、きっと今もそうなんだと思います。だから私は今も怯えて近づけないのです。